妄想観戦記 「上場ゴール!熱き戦いの行方!ベンチャー企業VSファンド&証券会社連合軍」
アナウンサー
「青い空の下、いよいよ世紀の一戦が始まります。期待の新星、ベンチャーの雄と評されるG会社の経営陣とこれに対抗するベンチャーファンドと名門証券会社連合の一戦。どんな戦いになるか期待が膨らみます」
解設者
「激しい攻防が予想されますね」
アナウンサー
「両者ピッチに並びました。どの顔にも闘志が溢れ出ていますね」
解説者
「G社社長もそうですが、ファンドマネージャーの顔にも並々ならぬ強固な意思みたいなものを感じます」
アナウンサー
「さぁどのような戦いになるか、今キックオフです!」
ピー―――――!!!
アナウンサー
「さて、気になるフォーメーションですが、解説をお願いします」
解説者
「まず連合軍ですが、3-3-4という攻撃的な布陣ですね、パスも点も取れるファンドマネージャーを真ん中に、売り抜け韋駄天の名を取るFWを左右においています。後ろは鉄壁な守りを誇る証券会社のディフェンダーで固めています。攻撃的でありながら強固な守備も兼ね備えた手ごわいチームです。これに対しG会社は社長のワントップですね。どちらかというと副社長や開発部長といったキーパーソンは引き気味な位置を取ってます。守備的にいこうという作戦ですかね」
アナウンサー
「戦力差は、やはり否めないということでしょうか」
解説者
「そうですね、多数の人材を要する連合軍に対し、G社は生え抜きが多く、少人数の会社です。それにチームのスポンサー集めにも苦労していると聞きますし、ファンドからの資金調達後、それなりに時間を経過していますから、資金もだいぶ減ってきているようです。そうした事情からチーム編成にも苦労しているようです」
アナウンサー
「連合軍の狙いは何でしょうか?」
解説者
「やっぱり運転資金の枯渇による倒産をどうしても回避したいのでしょう。そのためには、早めのIPOによる資金調達と、自らのエクジットの機会確保、それに銀行団からの資金調達、こうした目的を達成しなければなりません」
アナウンサー
「なるほど、この試合にはそうした意図が込められていると」
解説者
「そうです。それに対し、G社側は必ずしもIPOにこだわっているわけではないようです。まとまった資金調達ができればどんな形でも良いわけですから。けれども連合軍はもうビタ一文資金を提供する気はないようです。それゆえ双方の意思がぶつかり合う形になりました」
アナウンサー
「なんとも淋しい話ですが、勝負の世界。いずれの話も虫の良い話にしかきこえません」
解説者
「そうですね。ただ、IPOは何が起きるかわかりませんから、注意深く見守りたいです。あっ、失敬、サッカーでしたね、サッカー」
アナウンサー
「おっと、中盤を飛ばして、証券DFからファンドマネージャーにパスが通った!」
解説者
「これはチャンス!」
アナウンサー
「ああ、G社の財務部長が身を投げ出してブロック!ゴールは奪えません」
解説者
「決定的なチャンスでしたね」
アナウンサー
「ファンドマネージャーも悔しそうに天を仰いでいます。一方、G社経営陣は落ち着こうと声を掛け合っています」
解説者
「連合軍のIPO攻勢に、G社は劣勢に追い込まれる時間帯が多いですね。G社経営者は孤立する場面が多いです」
アナウンサー
「G社はどうすれば状況を打開できるでしょうか」
解説者
「G社経営陣は、時期を窺っているように見えます。まだ仕掛ける時間じゃないと考えているんでしょうか。タイミングを見極めようとしているように感じます。これに対し、G社社長はポジショニングがはっきりとしないというか、守るのか、攻めるのか、本人の中でもまだはっきりと決めかねているんじゃないでしょうか。もう一度全員で意思統一を図る必要がありますね」
アナウンサー
「ベンチから指示は行ってるのでしょうか?高いコンサルティングフィーが無駄になりそうです。あっと、開発部長に後ろから韋駄天売り抜けFWがタックル!」
解説者
「これは危ない!」
アナウンサー
「副社長が激しく抗議しています」
解説者
「熱くなってはいけません。連合軍の思うつぼですよ」
アナウンサー
「G社社長がファンドマネージャーに説明を求めています」
解説者
「開発部長、立ち上がれないようですね。これは大きな戦力ダウンですよ」
アナウンサー
「代わって入ったのは、ロングヘアの営業部長。まだ非常に若い選手です」
解説者
「彼は素質はあるんですが、いかんせん、まだまだプレーに安定感がありません。落ち着いてプレーしてくれれば良いんですが」
アナウンサー
「しかし、今日の連合軍は質の高いプレーをしていますね。G社のスキを巧みについています。ワンタッチ、ツータッチのパスで翻弄しています」
解説者
「かなり走らされてますね、G社は」
アナウンサー
「しかし、混戦からこぼれたボールがG社社長の前に!そのままドリブル、前がかりになった連合軍、慌てて追う。ペナルティ前まで来た!」
解説者
「ああ!」
アナウンサー
「惜しい、G社社長がシュートを打つ前に潰された。やはり鉄壁の防御。証券マンの壁は崩せないのか」
解説者
「初めてのチャンスでしたね、G社は」
アナウンサー
「ファンドマネージャーが声を荒げています。相当怒っていますね」
解説者
「絶対にIPOさせたいでしょからね、彼らは。監督からもきつく指示されているでしょう」
アナウンサー
「時間の経過と共にG社の経営陣の疲れが目立ってきています。財務部長も、まったく走れなくなりましたね」
解説者
「彼はベテランなのですが、こういう展開はしんどいかもしれません」
アナウンサー
「ああっと、韋駄天が抜けた。パスが通る。そのままシュート」
解説者
「うぉっ!」
アナウンサー
「副社長が止めた!しかし、手だ!手で止めた!ハンド!審判の笛が鳴り響く!PK!PKを連合軍が獲得!G社副社長、無念のレッドカード!」
解説者
「衝撃の展開です。なんとしてもIPOを止めたかったのでしょう。他の経営陣に肩を抱かれている姿が痛々しい」
アナウンサー
「今、副社長がピッチから出て行きます。その後ろ姿をG社社長が見送っています。一方ファンドマネージャーは韋駄天FWの頭を叩いて喜んでいます」
解説者
「対照的な光景ですね」
アナウンサー
「G社財務部長が涙を流しています。G社社長も覚悟を決めたような顔をしています」
解説者
「まだゴールが決まったわけじゃありません。上を向いて欲しいですね」
アナウンサー
「さぁ、PKを蹴るのは、ファンドマネージャーだ。そっとボールを置く。軽く目を閉じて集中して、ボールを蹴った!」
Gooooooooooooooooal!!!
アナウンサー
「決まったぁ!ゴーーール!遂に決まった、上場ゴーーーール!!そして、ここで試合終了!G社、健闘しましたが、一歩及ばず!」
解説者
「G社は、敗れはしましたが、これから一層努力してほしいですね。市場と真摯に向き合うことが肝要です。一方、連合軍は、今回はおめでとうを言いたい。しかし、まだまだ試合は続きます。気を許してはいけません」
アナウンサー
「あぁっと、ここで観客席からサポーターがピッチに乱入してきました。怒りに我を忘れてるのでしょうか?どのサポーターも目が赤い、攻撃色だ!まさにオームの攻撃色!怒りに満ちた赤が緑のピッチを埋め尽くす!」
解説者
「うーん、韋駄天は本当に早いですね、もう売りぬけています。今回の連合軍のキャピタルゲインは、少なく見積もっても100億はくだらないでしょう」
アナウンサー
「おっと、ここで新たな情報が!なんと、G社役員も、この死闘の際に自らの株を売り抜けていたようです!まさかとは思いますが、八百長が疑われるレベルです。G社社長の信用も地に落ちるのではないでしょうか?」
解説者
「いやぁ、驚きました。まさかね、そこまでするとは。今回のIPOでは、倒産回避の株式公開、そして利害関係者の綺麗なエクジット、そして銀行団を巻き込んだ新たな資金調達、さまざまな側面を垣間見ることができました。これはさすがに金融庁も黙ってはいられないでしょう。連合軍にも鉄槌がくだされるかもしれませんね」
アナウンサー
「サポーターの涙が本当に痛々しいですが、そろそろお時間です。またお会いしましょう!」
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