Good Bye 代田橋!
願望と現実は違う。
例えば、森博嗣氏の代表的小説S&Mシリーズに出てくる犀川教授、あるいは、伊坂幸太郎氏の陽気なギャングシリーズに出てくる成瀬のように冷静沈着、スーパークールで、頭脳明晰、な風を装いたいと思うことは多々ある。もちろんCPUの関係で、実際に頭が良いわけではないから、あくまでも「風」であって、どちらかといえば、頼れる人が演じられたらいいな、くらいなものである。
*犀川教授について知りたい方はこの本をどうぞ。
*成瀬について知りたい方はこの本をどうぞ
ほど遠い
weblioで確認すると、こんな感じの用語説明になっている。
まさしく状態がはなはだしくかけ離れている、その通りである。
なぜにこんなに勘違いしやすく、おっちょこちょいで、落ち着かない人間なのか、たまに、自分で自分という人間を着脱できたらいいな、と思う。
お通夜に出かけた
知人のご母堂がお亡くなりになったので、お通夜に出かけた。
生活圏からほど遠い場所で、普段乗り慣れない電車を乗り継いで目的地に向かう必要があった。
明大前で井の頭線を降り、新宿行きのホームへと急ぐ。ちょうど電車が滑り込んできていた。
階段を駆け上がり、飛び乗る。
降りるべき駅は代田橋だ。
しかし、電車は、減速する気配を微塵も感じさせない。
特急だった。
降ろしてくれ!、通り過ぎる代田橋駅を見やりながら、枯れるようにシャウトする心の声は誰にも届かず、新宿までの数分間、列車は何食わぬ様子で定常通りに運行された。
この時点で少し焦っていた。
通夜の開始時間からすでに遅れていた。もちろん、開始時間に間に合わなければならないわけではない。しかし、駅からの距離を考えるとなるべく早く着きたかった。
人波に押されるように電車を降りると、向かいのホームで、「さぁ、いらっしゃい」とドアを開けて待ってくれている電車があった。
当然飛び乗る。
特急だった。
再び、通り過ぎゆく代田橋の駅を見やりながら、呆然としていた。そして折れそうな心が疑問が呼び起こす。
いったい何をやっているんだ?
何が起こっているんだ?
軽い眩暈の後、 失った時間を数えながら、パニックに襲われそうになる。
たどり着けるのだろうか?
もしや、未知の、神秘的な、フォース的な、宇宙的な、絶対真理的な力が、自分を代田橋という駅に近づけないようにしているのではと疑い、よもや、やりすぎ都市伝説で特集が組まれるべき何かが起きているんではないか、と辺りを見回す。じんわりとにじむ汗が頬を伝い、スーツに包まれた体から熱が発せられた。
そこで学んだことがある。
何気なく過ごす際に流れていく時間と、切羽詰まった、あるいは、切に向き合い流れていく時間は、そのスピードがまるで違うということに。
まさしく相対性理論。
そして、目的地に向かって迂回し続けるこの奇妙な現象に、名前をつけようと試みた。
が、無駄な行為の連続に嫌気がさして、すぐに頭を振った。
どうかしていた。
落ち着け、落ち着け。
再びの明大前で、階段を駆け下り、駈け上がる。
電車はやっぱりホームに滑り込んでくる。
目が悪いくせに裸眼な自分を呪いながら、大丈夫、電車の文字が特急の色じゃない、それだけ確認すると、三たび電車に飛び乗った。
準急だった。
さよなら、代田橋!
Good day?!